耳の聞こえが悪い。難聴をきたす疾患
●急に聞こえが悪くなった場合
突発性難聴
急激に聞こえが悪くなります(稀に数日かけて悪化することもあります)。聞こえだけでは無く、耳鳴りや耳のつまり感を自覚することもあります。原因として内耳の血流が低下する、ウィルス感染等いろいろあげられていますが明確なことはわかっていません
治療 ステロイド製剤の内服や点滴治療が一般的。発症早期からの治療が勧められます
めまいを伴い、さらに難聴が高度の場合は安静目的で入院治療
音響外傷・騒音性難聴
コンサートやライブハウス、イヤホン、ヘッドフォン等からの巨大音、爆発や破裂で発生する音が原因で聞こえが悪くなります。極めて大きな音が原因で急性に起きたものが音響外傷、大きな音に長期間暴露され慢性に起きたものが騒音性難聴です。耳鳴り、耳のつまり感を感じることもあります。
治療 突発性難聴に準じた治療。数日で自然に改善することもありますが、早期に薬物治療を開始すると改善しやすくなります
成人の急性中耳炎に伴う難聴
急性中耳炎の初期では軽度の難聴を自覚します。炎症が内耳に及ぶと中程度以上の難聴が発症します。当初は耳の痛みで気が付かないのですが、痛みが落ち着いてから耳鳴りや難聴、めまいを自覚することがあります
治療 中耳炎の治療と並行してステロイド製剤の内服を行います。高度の難聴やめまいを伴う際は安静目的で入院加療を行うこともあります
成人は急性中耳炎になりにくい反面、改善まで時間がかかることが多く注意が必要です
耳垢による難聴
耳垢が大量に詰まることで聞こえが悪くなります。詰まるタイミングは自分で耳掃除をしてから、プールで泳いでから、シャワーを浴びてからが多いようです。自分で取り除こうとすると更に耳垢を押し込んでしまう為、受診をお勧めします
●徐々に聞こえが悪くなった場合
滲出性中耳炎による難聴
本来、鼓膜の向こう側には空気が入っています。何らかの原因で中耳に水が貯留する(滲出性中耳炎)と音の伝わりが低下し、聞こえが悪くなります。滲出性中耳炎は乳幼児では急性中耳炎後に多く、鼻炎や副鼻腔炎による場合もあります。成人でも時に発症します
症状 難聴、耳のつまり感。小児では自分で症状を伝えられないことが多く、音の反応の悪さ、言葉の遅れで相談して発見されることもあります
治療 鼻症状を伴う場合は抗アレルギー薬や抗菌剤を使用します。長期化する場合は鼓膜を切開する、またはチューブ挿入により換気を改善する方法があります
加齢に伴う難聴(加齢性難聴・老人性難聴)
加齢に伴って徐々に両耳の聞こえが悪くなります。発症時期や進行には個人差があります。初期には自覚が少なく周囲の人も気が付きません。進行すると「家族の会話や電話で聞き返しが多くなった」「テレビの音量が多くなっている」と周囲に指摘されます。さらに進行すると会議や集まりで複数の人が発言すると”聞き取れない”、”何を言っているか理解できない”といった訴えも聞かれます。難聴に伴い、周囲とのコミュニケーションが不足しがちになり、認知症のリスクが上がります。
中程度以上の難聴がある場合は、日常生活での不便の程度に合わせて補聴器装用を勧めています
*認定補聴器専門店への紹介を行っています
耳が痛い!よく見られる疾患をまとめました
外耳炎:成人の耳痛・かゆみ原因No.1
原因 耳掃除、イヤホン長時間使用
耳の中の皮膚はとても薄く、刺激に弱く、傷が付きやすくい場所です。耳掃除やイヤホンの使用など耳の中の皮膚への刺激を控えると改善しますが、傷が完全に治る前に再度刺激を与えると再発・悪化します
悪化すると痛みだけではなく、においのある耳だれが出て来ることがあります。カビ(真菌)が生えてしまう(外耳道真菌症)と治療に時間がかかります。
治療 耳の中を洗浄、点耳薬または軟膏
急性中耳炎:小児の耳痛・耳だれ原因No.1
耳の中(中耳)に炎症が起きて膿がたまり、痛みが生じている状態です。原因は鼻炎、風邪が多く、発熱することがあります。当院では中耳炎の状態によって抗菌薬を変えながら治療して行きます。大人でもかかることがありますが子供より治りにくいです。
治療 抗菌薬の内服、重症では鼓膜切開して膿を出すこともあります
外耳道異物
お子さんでは消しゴムやBB弾などを自分で耳に入れることがあります。成人では虫が入ってしまった場合が多いです。虫が暴れて外耳道に傷がついたり、鼓膜に触れたりすると耳痛になります。自力で取ろうとして耳の中を傷つけてしまうこともあります。
治療 異物を取り除きます
耳介軟骨膜炎、耳介血腫:耳たぶの痛み
耳介軟膏膜炎は耳たぶの周囲に炎症が生じて腫れと痛みが生じます。抗菌薬の内服で改善しますが、中には繰り返すものがあります。原因はケガ、ピアス、虫刺され、やけどです
耳介血腫の多くは柔道やレスリング等で耳に強い力が加わり、耳たぶと皮膚の間に血液が溜まります。早期に治療を行わないと、繰り返してカリフラワーのようなやや硬い耳になります。
帯状疱疹
耳の周囲や頬に赤い発疹が出現します。発疹が出る前に”ずきっ”とするような瞬間的な耳痛が生じることがあります。発疹が出て初めて診断が付きます。
治療 抗ウィルス薬の内服
のどの炎症からの耳痛(神経痛)
のどの炎症が原因で耳が痛くなる事があります。神経のいたずらと表現されます。”のどが痛い”と神経が信号を送りますが、途中で耳の痛みを伝える神経と通じてしまいます。本当は耳は痛くないのに、飲み込みの時にのどの痛みと同時に耳が痛くなるという現象が見られます。のどの炎症が落ち着けば耳の症状も良くなります。
耳からのめまいはこちらの特集から↓